2010年11月の読書メーター

11月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1049ページ

真昼のプリニウス (中公文庫)真昼のプリニウス (中公文庫)
約15年振りの再読.ストーリーらしきものは一応あるのだが,ストーリーそのものにあまり意味はなく,各々の登場人物が物事にどう接し,どのように言葉を用いてそれを表現するのか,その言葉の持つ本質的な不完全さ,言葉に対する誠実さといった事柄のみが物語の中にある重要なことであるように感じられた.残念ながら,私が共感できたのは,溢れる情報の中で無意味さを求めたくなってしまった,ある種の空白を抱えた門田の心境であるようだ.この小説から20年,世界は池澤夏樹の危惧した方向に進んでいるということなのかも知れない.
読了日:11月04日 著者:池澤 夏樹
贈る言葉 (新潮文庫)贈る言葉 (新潮文庫)
大学時代の恋人の回想を通し,性や女性が社会に生きること,その中にあった潔癖さや満たされぬ渇望等を描いた表題作に加え,いくつかの結婚と人生を通して,やはり性や,人生におけるあきらめといった事柄を描いた「十年の後」という2中編を収録している.前作「されど われらが日々―」に比べ,テーマとしての「性」という色が強いようだ.しかも,この時代における性であるため,現代の読者である私には,多少馴染みづらいように思えた.ところで,「十年の後」に,真島昌利の「さよならビリー・ザ・キッド」の原点を見たのは私だけだろうか.
読了日:11月04日 著者:柴田 翔
されどわれらが日々― (文春文庫)されどわれらが日々― (文春文庫)
何かに強い感情を持ちうるとしたら,それが良いものであれ,悪いものであれ幸運である.最も哀しいのは,心を動かされるべき悲劇に出会ってなお,変わらない自分でいられることなのだから.1950〜60年代,学生運動の時代のエリート学生達の青春と虚無感,焦燥感を実に綺麗な文章で描き出している.特に,主人公の回想シーンの絶望感,その婚約者,節子から主人公への手紙などは,実に読み応えがある.「やがて、私たちが本当に年老いた時、若い人たちがきくかも知れない、あなた方の頃はどうだったのかと。」柴田翔に,聞いてみたい.
読了日:11月02日 著者:柴田 翔
「近代の超克」論 (講談社学術文庫)「近代の超克」論 (講談社学術文庫)
雑誌「文学界」昭和17年10月号に掲載され,伝説的に有名となった座談会「近代の超克」を中心とし,昭和初期の国内思想に関する解釈を行っている.そして,それらが所謂大東亜戦争肯定といかにして結びついていったか,当時のインテリが,戦争をいかにして合理化していったか,その思想の価値等が批判的に述べられている.東洋的な新しい価値観を生み出そうという姿勢そのものは評価されるべきだろうが,70年近く経った今でも,近代の超克が成し得ていないという事実は,戦争を正当化する道具として使われたこと以上に皮肉なことなのだろう.
読了日:11月01日 著者:廣松 渉

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