8月 9th, 2012 by Akihiro SAITO
6月の読書メーター
読んだ本の数:3冊
読んだページ数:970ページ
ナイス数:7ナイス
誰か―Somebody (文春文庫)
人間ドラマとして読むならば,それぞれの登場人物が明瞭に描写され,その背景までもしっかりと伝わる濃厚さのある佳作.ただ,「心揺るがすミステリー」ということだが,ミステリとして読むのは少々難しいかな.中盤の伏線が,作者も隠すつもりないだろうというくらいに露骨で,そこに気づいた段階で先が8割方読めてしまう.謎を解いてやろうなどと,ある意味意地悪なこと考えずに読んだ方が面白い作品なのかも知れない.
読了日:06月20日 著者:宮部 みゆき
仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)
1990年だから,まだ本格的には売れ出す前の作品なのだけど,内容的な完成度はかなり高い.どんでん返しがあるとかなりアピールされていて,それをわかって読むと,衝撃度が低いかな.そこが残念.ただ,違和感は感じていたけど何でか気付かなかったので,結局のところそれなりには騙されてしまった.良作.
読了日:06月04日 著者:東野 圭吾
しあわせのパン (ポプラ文庫)
同名映画の監督自身によるノベライズ.映画を見ていないので何とも言えない部分があるけど,雰囲気は十分楽しめる.が,何と言うか,あらゆる意味で女の子だねぇって感じ.
読了日:06月02日 著者:三島有紀子
2012年6月の読書メーターまとめ詳細
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6月 7th, 2012 by Akihiro SAITO
5月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1380ページ
ナイス数:16ナイス
草の上の朝食 (中公文庫)
「プレーンソング」の続編.前作同様,いや,それ以上に何も起こらない.一応,主人公には恋人らしき人物は出来るし,そのせいか,前作よりも少しだけ主体的に物事に関わっているような気もするけど,それでもやっぱり,何も起こらない.と言うか,何気ない日々の中で,色々な事が実際にはあり,4人が5人に増えたことが窺えるのだけど,何もないように,相変わらずの彼らであり続けているということなのだろう.そして,相変わらずであり続けてくれるからこそ,そのゆっくり流れる時間を感じることが出来るのだろうなと思う.
読了日:05月31日 著者:保坂 和志
プレーンソング (中公文庫)
保坂和志らしい何も起こらない,だからこその心地いい空気.海に行くのだって,猫に餌をあげるのだって,理由なんて要らない.「ぼく」は結局何がしたいんだよ.なんてことは,決して言ってはいけない.ただ,そうなっているだけなのだから.それが受け容れられるかどうかが読者になれるかどうかの分かれ目.ストーリーのなさという意味では同じだが,文体の癖がそれ程強くない分,「季節の記憶」よりも取っつきやすいかも.どうでもいいけど,よく比較の対象となる村上春樹共々早稲田OB.この二人,何と言うか早稲田キャラじゃないよね.
読了日:05月21日 著者:保坂 和志
酒と肴と旅の空 (光文社知恵の森文庫)
今回は池波正太郎のエッセイ集,ではなく,池波正太郎編の,著名作家等の料理や旅行に関わるエッセイをまとめたもの.それぞれに特徴があるが,やはり編者の意向が強いのか,これまでの池波エッセイと近い印象のものも少なくない.そんな中では,カレーと父親の記憶を絡めた向田邦子の「昔カレー」が秀逸.思い出は,思い出だからこそ美しい.
読了日:05月14日 著者:池波正太郎
百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)
「果しなき流れの果に」と並び称される和製SFもう一つの極北.ということで読んでみた訳なのだが,これまた圧倒的な壮大さだ.前半で取り上げられたプラトン,悉達多,阿修羅王,イエスといった登場人物が未来において絡み合う後半という展開は実にドラマチック.東洋的無常観をバックボーンとした,宇宙や時の果てを求める物語,と言ってしまえば話は簡単なのかも知れないが,そんな単純なものでもなさそうだ.きちんと読み込むには,特に東洋の宗教,哲学に対する知識が相応に要求されそうで,私自身読み切れてるとは思えないのが残念.
読了日:05月07日 著者:光瀬 龍
2012年5月の読書メーターまとめ詳細
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5月 2nd, 2012 by Akihiro SAITO
4月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2199ページ
ナイス数:13ナイス
ル・パスタン (文春文庫)
池波エッセイ愛読者としては,今更コメントすることもあまりないが,個々のエッセイに,本人直筆のフルカラーイラストが入っているのが贅沢.内容的にもまとまりがある良書.
読了日:04月25日 著者:池波 正太郎
死の接吻 (ハヤカワ・ミステリ文庫 20-1)
財産目当てで富豪の娘に近づくが,その娘は妊娠してしまう.これでは勘当されて財産は手に入らないし,身の破滅を招きかねない.そこで,娘の偽装自殺を画策するが…….よくも悪くも古典だなという印象.人物描写は明瞭だし,第二部までの展開も期待の持てるものだった.しかし,今となっては新鮮味のある題材でもなく,真相にたどり着く第三部の,真相へのたどり着き方がかなり残念.題材に関してフォロワーを多く産んだのは評価するが,今となってはそれ以上のものでもないだろう.日本人なら「青春の蹉跌」あたり読んでれば充分じゃないかな.
読了日:04月23日 著者:アイラ・レヴィン
散歩のとき何か食べたくなって (新潮文庫)
池波正太郎の食エッセイも随分と沢山読んできたので,今更新しい感想というのもあまりない.この本も,相変わらずの池波節といった感じだ.読んでると,蕎麦を食べつつ一杯とやりたくなってしまうのも相変わらず.
読了日:04月16日 著者:池波 正太郎
幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))
「夜は若く,彼も若かったが,夜の空気は甘いのに,彼の気分は苦かった」という有名な一文で始まるサスペンスの古典的名作.妻殺しの容疑をかけられ,死刑の判決が下された主人公.その死刑執行までのカウントダウンの中で,彼とその日一緒にいた,アリバイを証明してくれる女性の姿を探すが,その女性の姿を見たものは誰もいない.いったい何故なのか…….手がかりを掴んだかと思ったら逃げていく,迫り来る死刑執行の日,そのスリリングな展開は名作の名に恥じない.若干拍子抜けの部分もあったが,評判通りでやはり面白かった.
読了日:04月15日 著者:ウイリアム・アイリッシュ
絶海にあらず 下 (2) (中公文庫 き 17-9)
最後は小野好古との一大決戦.……と想像しながら読んでいたら,最後の最後に来て予想外.しかし,実に爽やかにまとめたなという印象.史実の中へのフィクションの混ぜ具合,そのさじ加減は見事.北方謙三の歴史小説の中では,海洋ものは作者の思い入れが深いのか,ハッピーエンドになるパターンが多い気がする.ただ,上巻から振り返ってみると,最初の頃を書いているうちは,実際小野好古と決戦させるつもりだったんじゃないかなという気も.
読了日:04月12日 著者:北方 謙三
絶海にあらず〈上〉 (中公文庫)
藤原純友は,いかにも北方謙三が好みそうな題材だ.北方謙三なら,平将門より藤原純友だろう.そして,北方謙三が藤原純友を取り上げるとしたら,きっとこんな感じの人物で,こんな感じの物語になるんだろうなという先入観を持って読み始めてみたら,びっくりするくらいにその先入観通りの描写だった.と言っても,それが悪いわけではなく,寧ろその逆.北方謙三が得意とする題材を,北方謙三らしく料理しているわけで,ファンからすればつまらない訳がない.そういう極めて正しい北方流海洋歴史ハードボイルド小説.
読了日:04月11日 著者:北方 謙三
2012年4月の読書メーターまとめ詳細
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