7月 2nd, 2011 by Akihiro SAITO
6月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1741ページ
最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか
豊富な事例をベースにした失敗学の入門書とも言える一冊.特に複雑さを増し,失敗が与える影響が大きくなった現代のシステムにおいて,どのような条件が重なったときに致命的な失敗が起こるのか,どのような対応を取ったときに危機的な状況から逃れられたのかが記されている.単独の失敗が上手くいっているシステム全体を破綻させることはまずなく,複数の失敗,極めて稀と思われている条件の重なり合いがあって初めてシステムの破綻は表面に現れるが,破綻の条件がある以上,長期的に見れば必ず起こるつもりでいるべきだということなのだろう.
読了日:06月29日 著者:ジェームズ R・チャイルズ
選手の心を動かす監督の言葉
小宮山悟,清宮克幸という,早稲田大学の同級生にして,世代を代表するアスリート同士の対談.ただ,対談だからこそという話はあまりなく,基本的にこれまでの著書等で読んだ話で終わってしまった感があるのが残念なところ.もっと,ざっくばらんに突っ込んだ話を聞かせて貰いたかった.
読了日:06月20日 著者:清宮 克幸,小宮山 悟
指導者の条件
松下幸之助自身の指導者としての心得を,主に日本,中国の故事を引用しつつ1テーマ2ページまとめたもの.「指導者の条件」と題してはいるが,指導者に限らず,一般的な人生訓として通じるものだろう.なんと言うか,短い訓示をいくつも聞かされている感じか.必ず故事を引用して説明しているのは,話のタネにもってこいだし,説得力もあるのだが,心得そのものはごく当たり前で,また,「~であらねばならない」は語られているが,「そうあるためにはどうすればいいのか」がないのが画竜点睛を欠く印象だ.そのため,なるほどなで終わってしまう.
読了日:06月20日 著者:松下 幸之助
野球と戦争 (中公新書)
元巨人軍球団代表による戦中戦後の野球史.興味深いエピソードも多く,読み易くまとまった良書.戦前の野球がいかに異常な状態であったか,戦前~戦中の野球弾圧の一環として語られることの多い野球統制令が,実際の運用はともかく,制定時点では球界の健全化に寄与すべく定められたものだということもよくわかる.個人的に面白いなと思ったのは,甲子園も六大学も中止になった後でも,軍では野球が行われていたこと,関東大震災時の大杉栄殺害で知られる甘粕正彦が満州に球場を作って野球大会を開催していたことあたりか.
読了日:06月19日 著者:山室 寛之
虹の女神―Rainbow Song (幻冬舎文庫)
市原隼人,上野樹里主演で2006年に公開された映画の原作,約5年振りの再読.どこにでもありそうな自意識過剰な若者の話と片付けてしまえば確かに簡単だ.だが,主人公が,どこにでもいそうなつまらない人間であればある程,ある意味における共感が増すのも事実で,正しく等身大の登場人物であり,人物描写と言えるのかも知れない.また,読後感も悪くなく,2~3時間で気軽に読める中編.
読了日:06月19日 著者:桜井 亜美
季節の記憶 (中公文庫)
父子家庭の親子と隣人兄妹を中心とした鎌倉での日常を淡々と描写している.どういうストーリーですと説明できるほどのストーリーはない,純粋な日常描写に徹している.中高の後輩としての立場で言うならば,何というか栄光の図書館で繰り広げられてそうな会話という感じか.元々がそういう特殊なものだし,さらに言うと,はっきり言ってしまえばある種の傲慢さがあるから,受け容れられない人には全く受け容れられないんだろうなと思う.ちなみに,文庫版の解説は養老孟司だけど,この人はこの人で,鎌倉出身の栄光OB.
読了日:06月18日 著者:保坂 和志
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4月 4th, 2011 by Akihiro SAITO
3月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1252ページ
やがて今も忘れ去られる (角川文庫)
この人の本は,写真詩集の方が好きだ.言葉が先なのか,写真が先なのかわからないのだけど,ぴったりマッチしているようで,微妙にずれている,その間を想像するのが何となく楽しい.「好きなものを 好きと言うたびに そこまでの距離を思い知らされるばかりで 孤独感はつのる」
読了日:03月29日 著者:銀色 夏生
金閣寺 (新潮文庫)
1950年の金閣放火事件を題材とした三島の代表作の一つ.やがては美そのものを憎むまでに,金閣という美に取り憑かれた青年の内面を徹底的に抉り出している.人を狂気に陥れる,と言っても,本当にそれは狂気と呼べるのか私にはわからないのだが,そんな美を描いているだけに,その文の美しさは想像を超えていた.特に,最後に闇の中金閣を見る描写の幻想的なまでの美しさは圧倒的.「金閣は無力じゃない。決して無力じゃない。しかし凡ての無力の根源なんだ」それが憎しみの源泉であり,生きるための行為であった.そういうことなのだろうか.
読了日:03月29日 著者:三島 由紀夫
世界を肯定する哲学 (ちくま新書)
言葉・科学という不完全な道具で思考,表現している時点で,その不完全さが故の理解・表現不可能性が残る,それが筆者の主張する,全体を部分に分解し,集積し直すことでは全体は表現出来ないということだろうか.全体は,全体としてのみ存在する.そしてそれが,私が生まれる前から世界があり,死んだ後もあり続けることを実感するために必要になるとの議論だ.それにしても読むのに時間のかかる本だった.議論が難解ということではなく,話がどこに進もうとしているのかが見えづらく,どこに飛んでいくのかわからないという意味でだ.要再読か.
読了日:03月15日 著者:保坂 和志
蒼ざめた馬を見よ (文春文庫)
「―人間が見てはならない蒼ざめた馬を見てしまった世代なのだ。それは数限りない死の影です」直木賞を取った表題作を含めた初期短編集.流石に露文科出身と言ったところか,ロシアの描写の美しさなどは見事.ただ,この作者の特徴と言えばそれまでかも知れないが,どの話も最後が若干投げ放し感がある.特に,表題作の主人公の過去などは,伏線としてもう少し活かしても良かったように感じた.そのあたりで多少不満の残る作品も多かったが,「天使の墓場」は秀逸.社会情勢を物語の中心に据えながら,緊張感のある人間ドラマに仕上がっている.
読了日:03月07日 著者:五木 寛之
文芸的な、余りに文芸的な (1964年) (新潮文庫)
谷崎潤一郎との論戦を基本としながらも,古今東西の文学・芸術に通暁した芥川らしい,インテリの薫り漂う芸術論となっている.明治,大正期の事情に精通していればより面白く読めるのであろうが,十分な知識のない私にとっても,当時の文壇の雰囲気を想像できる一冊だ.曰く「僕等の語彙はこの通り可也混乱を生じてゐる。(中略)が、誰も皆間違つてしまへば、勿論間違ひは消滅するのである。従つて、この混乱を救ふ為には、―一人残らず間違つてしまへ。」ちなみにこの本,父親の本棚からちょいと拝借したものなのだが,価格80円だそうで.
読了日:03月05日 著者:芥川 龍之介
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3月 8th, 2011 by Akihiro SAITO
2月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:856ページ
こんな言葉で叱られたい (文春新書)
巨人軍代表清武英利氏が,球界入りして見聞きした言葉,印象的なエピソードなどをまとめたもの.プロフェッショナルの世界,頂点の世界だからこその言葉の重み,真剣さが見える.流石は元新聞記者というところか,個々のエピソードが実にコンパクトにわかりやすくまとまっていて,読みやすい.ただ,元々が雑誌等のコラムということで,仕方ないのかも知れないが,若干あっさり纏めすぎている印象がする.もう少し掘り下げて,丁寧に書いて欲しかったところだ.個人的には,原貢の「布団の中で考えるな」が印象的.
読了日:02月09日 著者:清武 英利
一生懸命―木村拓也 決してあなたを忘れない
元プロ野球選手で巨人軍コーチ(当時)の木村拓也氏の追悼本.由美子夫人の著書となってはいるが,関係者がそれぞれの思いを綴った本と呼ぶのが正確だ.いかにもな追悼本なので,故人に思い入れがあれば読むに値するものだし,なければ読むまでもないのだろう.私は前者だ.選手として,コーチとして,そして,一個人として,彼は地味ながらも実に魅力に溢れていて,それだけに,亡くなったという事実はショックであったし,何よりも,惜しいという気持ちが強い.ちなみに私は,彼の死にショックを受けて,健康診断等真面目に受けることにした.
読了日:02月08日 著者:木村 由美子
球界の野良犬
球界屈指の問題児として知られた愛甲猛の自叙伝.特に,パ・リーグ時代のエピソード,ドーピングの話の生々しさは印象的だ.だが,スッキリと笑って済ませられるレベルで留めているので読みやすいと思う.張本勲や落合博満,金田正一評も面白い.こういう昭和な香りの漂う野球人は,もう出てこないのかもしれないなと思うと,それが正しいことの筈な反面,若干の寂しさも感じてしまう.
読了日:02月02日 著者:愛甲 猛
顔・白い闇 (角川文庫)
表題作の「顔」,「白い闇」を含め,5編が収録されている短編集.いずれの作品も,犯人であったり,被害者であったり,関係者であったりの心理描写が細かく,分類としては犯罪小説なのであろうが,犯罪そのものや推理以上に,人はいかにして罪を犯すか,いかにして巻き込まれていくのかといったことが主題になっているようだ.それぞれの作品における,それぞれの形での破綻に向かっていく流れは,良質のサスペンスと言えよう.「張込み」に登場する主婦の,日常と犯罪との狭間の描写が白眉.
読了日:02月01日 著者:松本 清張
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2月 4th, 2011 by Akihiro SAITO
データ解析の期末試験並びに最終回の宿題の採点が終わりました(無論,宿題の再提出は月曜日まで受け付けています).今年は,例年に比べて受講者が少なかった代わりに平均点も高く,皆さん基礎がしっかりしている印象でした.期末試験は220点満点で作ってあったのですが,平均点が140点,点数の範囲は78点~186点となりました.100点満点換算だと,平均64点,得点の範囲は35点から85点となります.例年だったら平均点は100点満点換算50点程度ですので,正答率の高さがわかります.
さて,今日提出して貰った宿題で貰ったコメントについては授業時間中に回答できませんでしたので,こちらで回答しておこうと思います.
- 分析ツールの使用などの作業は覚えてきたが、専門的な考え方や論拠などがまだまだ覚えられていないと感じた。
- 統計にしても,数学にしても,私は言語として捉えています.つまり,その数字であったり,計算式であったりが何を言っているものなのか,それこそが本質という訳です.なので,覚えようというよりは,言いたいことをわかってやろうという気持ちの方が良いんじゃないかなと,個人的には思っています.
- 切片がマイナスになってしまった。Xとyの選択は間違っていないと思うのだが、予測値もマイナスになった。考えたが、何故だか分からない。
- 重回帰分析の価格の予測値がマイナスになってしまいました。これでもいいのでしょうか?
- 縦の長さ10cmではちゃんとした価格が出なかった
- 「宿題」としては,あってます.ですが,回帰分析としては問題ありです.これは,回帰分析における外挿に関わる問題として知られています.予測値がマイナスになってしまった皆さんは,作ったデータの中に,縦の長さが10センチ以下の本がなかったと思います(まあ,縦の長さが10cm以下の本というのはそうそうありませんので,そういう意味ではちょっと意地悪な問題ではありました).つまり,たとえば,15cm~25cmの本を利用して推定した回帰係数で,10cmというデータの範囲外の場合を予測した訳です.これを,外挿と言います.回帰分析は,飽くまでもデータの範囲,ここでで言えば15~25cmの本について用いるのが基本で,その範囲の外のデータに当てはめる場合には,問題が発生することが多々あるのです.
- 元のデータのばらつきが大きいときは、あてにならなさそうだと思った。
- 上で説明したとおりで,外挿の問題を考えると寧ろ逆で,予測変数はある程度ばらついてくれていた方が安定するのです.
- どちらが適切か判断するのが難しかったです。
- 回帰分析の変数選択の問題というのは,簡単に説明しましたが,実はとても奥深いものです.授業で説明した決定係数に関わるもの以外にも,様々な手法があります.実際に回帰分析を行う機会があったら,是非勉強してみてください.
- 後半の分散分析と重回帰分析があまり理解できなかった。この部分をより重点的に教えてほしかった。
- 私も本当はもうちょっと説明したかったのです.今日もちょっとお話ししたとおりで,たとえば私が大学2年生の時に受けた基礎統計の授業では,半年丸々使って分散分析と回帰分析の話だけをしました.それくらい,分散分析と回帰分析は色々な話題がある手法です.ですが,この授業は半年で,Excelの基礎や平均値といった話から,回帰分析にまで到達しなくてはいけないという縛りがあり,残念ながら駆け足になってしまいました.興味があるようでしたら,是非より専門的に勉強してみてください.
- あるなんらかの値により別の値が予測されるところが面白かったと思う。これを活用してなんらかの関連があるものを調べてみてみたいと思った。
- 回帰分析は,とても幅広く利用されている手法です.是非,頭の片隅にでも,こんな手法があったと言うことを置いておいて貰って,今後役立てて貰えれば幸いです.
- 期末テストは不安だけど、頑張ります!!この授業を通して、エクセルの使い方(データ分析のツールなど)ができるようになったのが大きな収穫でした。
- Excelは,今後も様々な場面で使うと思いますので,是非習熟して貰えればと思います.
- 試験、がんばります。
- データを出しても、それを分析するのは難しいです><
- 難しかったです。テストがんばります。
- なんとなくやってるという感じなのでテストが大変怖いですが頑張ろうと思います。
- 試験,お疲れ様でした.基本駆け足になってしまう部分が多く,わかりにくい授業だったとは思いますが,皆さんよくついてきてくれたと思っています.持論ですが,統計の授業は3回聞くくらいじゃないとわからないです.なので,今年さっぱりわからなくても,是非繰り返し勉強し,考え方などを身につけて貰えればと思います.
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2月 2nd, 2011 by Akihiro SAITO
1月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:470ページ
海と毒薬 (新潮文庫)
第二次大戦末期の九大付属病院での生体解剖実験を基本とし,日本人の罪と罰に対する意識について追求した一冊.2人の医学生を通したそれぞれの葛藤の描写は良かった.ただ,何故「日本人」がテーマになっているのかは最後まで理解できなかった.生体解剖を実施した教授の,ドイツ人である夫人を通して,神が見ているという意識のない日本人には,罰を前提としない罪の意識がないと主張したいのであろうが,倫理観を神のみに依存してしまう考え方が,これまでどんな歴史を作ってきたのかを考えれば,見方が一方的に過ぎるような気がする.
読了日:01月27日 著者:遠藤 周作
点と線 (新潮文庫)
社会派ミステリーの嚆矢として知られる一冊.列車時刻表を利用した緻密なアリバイトリックと,それに挑む捜査陣という話そのもの,人物描写は面白いと思うが,一方で,本格的なハウダニットと考えて読んでしまうと拍子抜けするだろう.現代的な感覚で言えば,最初に考えて当然という部分があり,だからこそ,却ってまさかこんな単純なトリックの訳ないだろうと思って読んでいたら,そのまさかだったという感じだ.ただ,アリバイの,ジグソーパズルのような整然さはある種美しさすらあり,その緻密な組み立ては素晴らしい.
読了日:01月25日 著者:松本 清張
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